『お盆と、ドイツのイベントと』
みなさん、こんにちは! J.FECの“ T ”です。例によって久しぶりの更新になってしまいました。世の中はちょうどお盆休みですが、J.FECの工場は年中無休。今日ももちろん動いています。私も出勤していますけど、電話はほとんどかかってきませんね(笑)。
ただ、こういった時期に気を付けなければいけないことがいくつかあって、一つは添加剤や備品を切らしたり機器に故障が発生したりすること。何しろ他の会社さんが結構お休みされているので、対応して頂けないことも多いんですね。だから事前に多めに仕入れておいたり、替えの利かないフォークリフトなどは期間を決めて代車を貸してもらったりしています。
もう一つは、道路がすごく混むこと。完成した飼料はタンクローリーで豚舎さんまで運ぶので、お盆の渋滞というのが非常に響くんです。時間がかかって予定通りの時間に納品できない、なんてことのないように早めに出発してもらったりもするため、ドライバーさんの負担がどうしても大きくなってしまいます。そこでなるべく道の混まない時間に納品させてもらったり配車を工夫したりと、相手方にご迷惑の掛からない限りで可能な対応をしています。いつにも増して事前準備が大事、ということでしょうか。
さて、今回はある国際会議のご紹介をしたいと思います。正式名称を『2030アジェンダ達成に向けた持続可能な消費と生産に関するG7協調行動ワークショップ(第1回)』といい、6月20日にドイツのベルリンで開催されました。最近ときどきニュースで取り上げられる「SDGs」=「持続可能な開発目標」に関連して環境省がドイツ政府と共催したワークショップなのですが、実はこのワークショップにJ.FECが招かれました! 「持続可能な消費と生産」がテーマということで、余剰食品の飼料化という形で食べものの“環”をつくる技術と努力を評価していただいた形となります。弊社代表取締役の髙橋が事例発表者・パネリストとして参加し、私も同行して多くのプレゼンテーションに接することができました。
ワークショップは三部構成で、それぞれ「Session 1 : Enhancing consumer information(消費者情報の活用)」「Session 2 : Reducing food waste and food loss(食品ロス・食品廃棄物の削減)」「Session 3 : Implementing Sustainable Lifestyles and Education(持続可能なライフスタイルと教育の実施)」と題されています。議事の概要については環境省より詳細なレビューが出ていますので、ここでは私個人として印象の強かったところ、Session 2とSession 3の内容を中心にご紹介したいと思います。
まずSession 2 では環境省リサイクル推進室の小林室長補佐が進行役を務め、ユニー株式会社の百瀬上席執行役員、イギリス廃棄物・資源行動計画(WRAP UK)のDr. Marcus Gover、そして弊社代表取締役の髙橋による事例発表およびパネルディスカッションが行われたのですが、新しい発見がとても多くありました。たとえば事例発表の際にWRAP UKの方が強く訴えていたのは「計測できないものは管理できない」という点で、行動を行う際は現状を客観的に把握し具体的な目標を示すことが重要であるということを様々な例を挙げて論証するわけです。「100個のジャガイモがあったとして、そのうち実際に食料として摂取されているのは四分の一、25個に過ぎない(ジャガイモ100個のうち、農地で2個が失われ、仕分けで9個、保管中に3個、梱包・輸送中に17個、調理されず無駄になるのが9個、調理中に20個、食べ残されて15個がそれぞれ失われる)」――こういった話を聞くと、もう少し何とかしなければならないと素直に感じますよね。この状況はまずい、どこがいけないか考えよう。そして目標を立てて努力して……という流れが生まれてきます。「まず大切なのは連携」というのもこの発表者の言なのですが、どんなことでも複数のプレイヤーが連携していくには共通認識と共感が必要不可欠だと思うので、今回のような情報提供は非常に有意義だと感じます。
その後のパネルディスカッションでも、ユニー株式会社さんの小売業からのアプローチ、あるいは日本フードエコロジーセンターのリサイクラーとしての事業活動により、食品廃棄の減量と資源化、そしてコストダウンが並行して達成できていることについて多くの議論が交わされました。一つの結論として示されたのは『消費者を巻き込むことの重要性』で、具体的な取り組みと客観的な数値を踏まえたうえでこの結論が示されたことで、先ほどの言い方になぞらえれば「連携に必要な共通認識と共感」が生まれたワークショップといえるのではないかと思います。
Session 3 では地球環境戦略研究機関(IGES)のルイス・アケンジ氏による持続可能な消費と生産における持続可能なライフスタイルと教育(SLE)に関する基調講演ののち、WBCSD、WRAP UK、DEFRA UKおよび環境省環境教育推進室の田代室長補佐によるプレゼンテーションとパネルディスカッションが行われました。最も興味深かったのはWBCSDのMr. Julian Hill-Landoltによる発表で、冒頭から「現在、人々は持続可能なライフスタイルを得ることはできない。仮にできたとしても、彼らはそれを望まない」という挑発的なテーマを掲げたものでした。
氏は、“持続可能な生活”とは格好悪いものであるか、もしくは金持ちの道楽である、と主張します。現に今回のワークショップに集まっている参加者の多くは “持続可能な生活”をしていないはずである(飛行機に乗って海を渡ってきた人も多いと思うが、それは全く“持続可能な生活”ではない)し、多くの人々は未だに物質的な豊かさを「良い生活」と考えているのだから、というのですね。とても皮肉っぽく、しかし厳しい指摘です。
それを踏まえたうえで、「では、ベターな選択肢は何か?」という問いに対し、氏は「ストーリーの提示」を挙げました。つまりあまりコストのかからない、(比較的)持続可能な生活を“良い生活”であると宣伝する、ということです。具体的には、家族や友人と記念日を過ごす、ゆっくり眠る、みんなで旅行をする、といったようなことで、実は多くの人々は、物質的な豊かさよりも(あるいは少なくとも、それと同時に)このような「夢」を望んでいる面がある。だからそういったストーリーを積極的に示し、「夢」への誘因を図ることがベターな選択肢ではないか、というのが氏の主張でした。そして、このビジョンを達成するためには、企業に対し、彼らに利益が出るスキームをもって提案していく必要があるだろう、というのです。いくつか疑問はある(たとえば、このような「夢」に惹かれる人は“一度持続可能でない生活”を経験した人だと思われ、それがどの程度の広がりを持つのか等)ものの、非常に印象的なプレゼンテーションでした。
その後のディスカッションでも、いかに消費者に働きかけていくかが議論の中心となりました。さらに一歩進めて、個人の分野である「ライフスタイル」というものに対して政府が立ち入っていくことの是非についても論じられ、廃棄物の処理や公共財の管理に政府が責任を持っていることから一定の介入が許容されるのではないか、あるいは、個人の手だけには任せられないが強制はできない、我々ができるのは責任をもってメッセージを送ることである、等々。それぞれの意見に濃淡があるものの、選択肢、オプションの存在・作成・提供が重要であるという認識はパネリストに共通していたと感じます。また、WRAP UKのパネリストはこのような働きかけを“人生の変革期”、つまり人が一生のうちに迎える様々なイベントの時期(別の言い方をすれば、生活環境が変わるとき)に行うことが有効であり、こうしたメッセージが行動を変えるカギになるのではないか、と述べていました。逆に言えば、通常の時期ではなかなか行動を変えてもらうのは難しいということでもあるわけで、現状に対して示唆的なコメントだったように思います。
最後に環境省地球環境局の関谷国際連携課長とルイス・アケンジ氏が取りまとめを行いました。そこではエビデンスに基づいた取り組みを、ターゲットを絞ってアプローチすることが基本になるという認識が示され、G7の一員として実際に“持続可能なライフスタイル”のために協力していきたい旨のコメントをもって、ワークショップのまとめとされました。
……以上が今回のワークショップのまとめとなります。これでもだいぶ端折ったのですが、かなり長くなってしまいました(苦笑)。
私自身、今回同行したことで環境問題に対する深い知見を持った方々と出会い、非常に勉強になりました。特に、どのセクションにおいても「どのように消費者に訴えかけるか」が重要なテーマとなっていたことが印象的で、工場見学に対応することがある立場の人間としてとても考えさせられます。
他方で、自分の知識不足、英語力不足といったこともあり、様々な人と積極的にコミュニケートするというところまではいかなかったのが正直なところです。もっといろいろと学んでいって、問題の解決に自分から動けるようになっていきたいですね。
それでは今日はこのあたりで。ご覧いただきありがとうございました!